この物語はフィクションであり実在の人物・団体・事件等には全く関係ありません。
内容に暴力的な表現やモラルに反することetc…が少々描かれていますが、
現実社会で実際に同じような行動・言動をすると容赦なく訴えられたり捕まったり
それはもう大変なことになるので良い子も悪い大人も絶対マネをしないで下さい。
彼等の活躍(?)を見て正義の味方に対する心象が変わっても怒らないでください。








 ありきたりだ。誰に言われるまでもなく自分でそう思う。
 自分が物書きだったらこんなことを話に書いたりはしないだろう。そのくらいありきたりだ。
 だが、そんなことは関係無しに目の前のまあいわゆる不良という種類の人種はカツアゲを継続してくれる。ついでに言うとご丁寧に胸ぐらまで掴んで。人気がサッパリ無い所で。ホントありきたりだ。
 別に平凡な日常を愁いて刺激を求めている訳ではなくて、詰る所現実逃避をしているだけなのだが。
 身長が特別高い訳でも腕っ節が強い訳でもないし、オマケにここで手を出したら部活の仲間に迷惑がかかるかなぁという意識が働いてされるがままになっている。
 まあ今カツアゲされている理由がそれなりに大金である部費を所持しているから、だったりするのだが。
 多分職員室で顧問が不用意に渡してくれた部費を見かけたのだろう。執拗に部費を出せと言ってくるのだが、渡す気などサラサラない。
 自分はあの部の一応部長であるのだし、メンツとかその他諸々のことを考えても屈する訳にはいかないだろう。第一この部費は大切な大切な遠征費と合宿費なのだ。
 ボキャブラリーの少ない罵詈雑言を発するのにも飽きてきたのか(それでも2,3回言ってる事がループしていたと思う)そろそろ拳なり蹴りなりバットなりが飛んで来そうな雰囲気だ。
 顔は勘弁してくれないかなぁ、格好悪いから。等と考えていると、後ろからやたら偉そうな声が掛かった。
「善良な一般生徒に手を上げるとは何事だ!」
 首を出来るだけ後ろに向けて(何しろ胸ぐらを掴まれているので見辛いことこの上ない)声の主を見遣ると、そこには真っ赤な全身スーツに身を包んだ変態が1人。何コレ、ドッキリ?
「何なんだテメェ等! 変な格好しやがって頭おかしいのかアァ?!」
 頭おかしいのはアンタ等だ、と思いつつ他にもいるらしい変態の事を考える。お決まりのパターンだとヒーローですがね。ここで現れるのは。
「野球レッド!」
「サッカーブルー!」
「バレーブラック! 以下略!」
「5人揃って、球技戦隊エースレンジャー!」
 TV番組だったら背景で花火が炸裂してドーンとか音が鳴ってるんだろう自己紹介を済ませてくれた変態達。
 とりあえずお決まりのパターンなようですね。まさか本当に現れるなんて露ほども思っていなかったけど。
 実際は自分がヒーローだと思い込んでるんだか何なんだかは分からないけどとりあえず恥ずかしげもなく全身スーツに身を包めるような変態達だけど。
 そこまで考えた時、やっと不良が胸ぐらを放してくれたので自由の身になる。
 というかね、球技戦隊エースレンジャーって何だよ。何で一人ひとりカラーの前がスポーツの名前になってんだよ。普通エースレッドとか言うだろ。その一言で身元バレてるよ。サッカーブルーなんて同じクラスだよ。何やってんだこの人達。大体なんだよ以下略って。そもそもお前等3人しかいないのに何で5人揃ってなんだよ。
 内心でそんなツッコミをしている間に、不良達は特撮モノの雑魚手下(いわゆるショッカー)よろしく、なんちゃってヒーローに真正面から向かっていく。え、何コレ。文化祭用の映画撮影? と思わずにはいられない。
 だが其処から先は予想外だった。いや、変態扮するヒーローの出現も予想外ではあったのだが。
 真正直な軌道を描いて向かってくる不良に対して野球レッド(本人の意向を立ててそう呼ぶ事にしよう)がどこからともなく取り出したのはバットだった。
「必殺! 野球アタック!!」
 そう叫ぶが早いかバットは不良の頭の芯を捉えてクリーンヒット。正直も何もヒーローのやる事じゃない。それは敵がやる事だ。
 勿論バットで殴られた不良は倒れた。目立つ外傷がないのが不思議なくらいの勢いだったので当然の結果だろう。
 あーあ、と思いつつ他に目をやるとその横ではサッカーブルーが「必殺サッカーアタック」と叫びゴールキックの要領で思い切り急所を蹴り上げており、その反対側ではバレーブラックが「必殺バレーアタック」と叫びながらジャンプアタックの要領で渾身の力を込めて不良の脳天にアタックをしていた。
 お前等スポーツマンじゃないのか。スポーツマンシップという言葉は何処にいったんだ。
 何というか、不良達が哀れでならない。
「やあ君、危ないところだったね」
 ヘルメットをしている為に表情は分からないが恐らくにこやかに笑っているのだろう野球レッドが手を差し出してきた。握手を求めているのかもしれない。
「アリガトウゴザイマシタ」
 その手には気付かないフリをして一応お礼を言う。例え目の前の彼らが真正の変態だったとしてもカツアゲの危機から救ってくれた事に変わりはない。腑に落ちないものが山のようにある気もするが。
「じゃあこれから部活に行くんで」
 これ以上関わり合いになりたくなかったのでそそくさと部室に向かおうとする。
「あ、君の部活は?」
「卓球部ですが何か」
「そこで一番強いのは」
「とりあえず一番成績がいいのはオレですよ」
 ああもうさっさと部室に行かせてくれ。さっさと解放してくれ。というオーラを隠さずに返答する。
 だがエセヒーロー達は互いに顔を見合わせ頷くと肩に手を置き、爽やかに言い放った。
「ようこそ、球技戦隊エースレンジャーへ」
「今日から君は卓球グリーンだ!」
「そして以下略は今日から君の台詞だ」
 数秒フリーズして、再起動。
「ふざけんな何でオレがこんな変態集団の仲間入りしなきゃなんないんだ! 逢沢、お前も何考えてんだよ教室とキャラ違うじゃないか!」
 勢いに任せサラリとサッカーブルーの本名を言うと、自称エースレンジャーは特に慌てた様子も見せず、だが喜んだ様子でこう言った。
「オレ等の正体を見破るとは! こうなったら仲間になるしかないな!」
 何が嬉々として仲間になるしかないだ。初めからその気だったくせに。大体その理屈は悪役が使うものだろう普通は。
 全力を持って拒否しようとしたのだが、胴上げの要領で3人に担ぎ上げられたので結局はどうすることも出来ず、大人しく運ばれるしかなかった。
 あまり下手に拒否をすると自分もあの哀れな不良達と同じ結果を辿りかねない。それはゴメンだったので、渋々されるがままになる。

 鈴木英和、卓球部部長。
 恐らく今までで一番不幸な学校生活になるであろうことを予感したとある日の午後4時だった。




普通の日々に戻りたい。



こんなヒーローモノがあっても多分観ない。