この物語はフィクションであり実在の人物・団体・事件等には全く関係ありません。
内容に暴力的な表現やモラルに反することetc…が少々描かれていますが、
現実社会で実際に同じような行動・言動をすると容赦なく訴えられたり捕まったり
それはもう大変なことになるので良い子も悪い大人も絶対マネをしないで下さい。
彼等の活躍(?)を見て正義の味方に対する見解が変わっても怒らないでください。








 午後4時2分。紛れもなく現在時刻は午後4時2分である。
 何故そう言い切れるのか。理由は簡単、腕の電波時計が今現在その時刻を指し示しているからだ。
 つい先程まで鈴木英和は不良に部費をカツアゲされていた。まあ非日常に辛うじて片足を突っ込めるかどうか微妙なラインの日常にいた訳だが、カツアゲの最中にそれぞれ赤青黒の全身スーツを着た変態達が乱入し、そのせいであっさりと境界を飛び越え非日常に引き込まれた。挙句、仲間にまで引き込まれかけているのだ。現在進行形で。
 2分間も胴上げ状態で運ばれているお陰で乗り物酔いになりかけている。全身スーツを身に纏った変態達を乗り物と言って良いなら、だが。
 おまけに「そぉい」等と妙な掛け声でやってくれているものだからそれが耳について仕方がない。何だ「そぉい」て。何の掛け声だ。
 そこで上下運動を繰り返していた英和の動きが止まった。文字通り手も足も出せない状態の英和の動きが止まったというのはつまり下で胴上げをしていた3人の動きが止まったということで。
 絶好調現実逃避中だった英和の脳がそこまで理解した時には既に英和の身体は板張りの床に投げられていた。
 どうやら小会議室のようである。ようであるも何も入ってくる時にしっかりとそう書かれたプレートを目にしたのだが。
「痛ェ!」
「ヒーローたるものこの位の痛みで声を上げていてはいけないぞ、卓球グリーン」
 先に『仲間に引き込まれかけている』と述べたがこれは英和の主観で見た場合のことで、全身スーツの変態達の主観で見た場合には既に英和は彼等の仲間になっているようだった。
 ちなみに卓球グリーンというのはどうやら英和のことらしく、そう言い放った赤い全身スーツの男は自らを野球レッドと名乗っている。
「うるせぇ少し黙れよ。大体お前等部活はどうしたんだよ仮にもエースだろ」
 部活に行く事も出来ず会議室に放り込まれた英和は悪態を吐く。
 ちなみにエースというのは彼等が名乗る『球技戦隊エースレンジャー』がどうとかではなく、彼等が正真正銘各部活のエースだからである。だからこそ、ヒーロー名を名乗った時に素性がバレバレだったのだが。だって、エース戦隊で野球レッドって……。隠す気がさらさら感じられない。
 英和の質問に答えようとしたのだろう、野球レッド(少々面倒なので以降は色名のみ記載する事にする)が口を開く気配があったのだが、それは突如電源の点いたテレビに遮られた。
 後ろを振り向きテレビを見遣ると、其処には虎の仮面を被った人間が映し出されている。
「とうとう4人目の仲間を見つけ出したようだね」
「マスク司令官!」
 綺麗に3人声を合わせて全身スーツの変態達はそう言った。
 いやもうこれ十中八九校長でしょう。だって背景校長室だし。服装が今朝集会で見た校長そのものだし。
 校長がこんな変態達に関わっているという事よりも虎の仮面よりも何よりもこの一大喜劇のバカバカしさに英和はもう溜息しか出ない。
 そうだ多分これは文化祭の為の劇か何かだ。でなければドッキリ企画だ。きっと他にも何人か善良な生徒が餌食になっているに違いない。
「この調子で校内に巣食う悪の輩を駆逐し5人目の仲間を見つけ出して欲しい。――では以上だ」
 校長……いや、マスク司令官と言うべきだろうか、ともかく虎仮面の人物はテレビから姿を消した。いや、テレビの電源が切れた。コレは一体どこで遠隔操作をしているのだろう。
 そんな事をぼんやりと思っていると今度は何処からともなくサングラスをかけた女性が出てきた。
 普段あまり見かけることはないが間違いない。事務室にいる事務さんの1人だ。確か上原さんとかいったはずだが。
 校長といい上原さんといい何やってんだ良い大人が。と、内心でツッコミを入れる。一応年上なのであまり失礼な事は言えないじゃないか。と誰にでもなく言い訳をしてみる。
「こんにちは、グリーン」
「え、あの、いや……もう良いです。ハイはじめましてもうグリーンとでも何とでも呼んで下さい」
 大人まで加わっているのならもう自分に打つ手は無いだろうと判断して英和は抵抗する事を諦めた。こうなったらトコトン付き合ってやろうじゃないか、という心境で。世間一般で言うヤケクソという奴だ。
「私はオペレーターのグラッシィといいます。普段はグラさんと呼んで下さいね」
 ああもうドコからつっこめば良いのだろう。むしろこれはスルーすべきなのか。
 とりあえず逐一挙げて行くならまずグラッシィというのは直訳でメガネですよねサングラスではなく。あとグラさんてもうちょっと捻ったネーミングには出来なかったんですか。大体普段はって普段じゃない場合はどういうときですか。むしろなにやってんですか上原さん。といったところだろうか。
 一連の作業を脳内でしているとエースレンジャー達の自己紹介も始まってしまっていた。
 とりあえずレッドが先陣を切ったようだが全く聞いていなかった。まあ紹介されるまでもなく知っているので問題はないだろう、と思ってみる。
 ブルーとブラックもレッドに引き続き何だか言っているようだが部活の前(忘れそうだがまだ部活の前なのだ)にこれ以上疲れるのも嫌なので英和はスルーすることにした。その代わりに自分の知っている彼等のデータを思い出してみる。
 まずは丸腰相手に躊躇いも戸惑いもなくバットを使ったレッド。
 正体をバラしているとしか思えない自己申告と声から察するに野球部で2年ながら4番バッターである柿崎新吾だろう。ちなみに守備位置はセンターである。
 所属学級はたしか特進U−Bで英和の隣のクラスだった筈だ。
 友人知人その他諸々から聞き及んだ彼の性格は野球一筋で硬派、典型的な高校球児ということだが、典型的な高校球児は大切なバットをあんな風に使わないと英和は思う。
 続いて相手の急所を同じく戸惑いもなく蹴り上げたブルー。
 何と言うかもう自己紹介というか姿というかとにかく全身その他全てから英和は彼の正体を察した。何を隠そう同じクラスでサッカー部の逢沢拓その人なのである。
 柿崎と同じく2年ながら壮絶なポジション争いを勝ち抜き11番を背負っているというのはクラスでは知らない者のいない話だ。
 性格はクール、クレバー。正直英和はまだブルーが逢沢拓であることが信じられないでいる。いや、信じたくないと思っている。
 最後に強烈なアタックで恐らく確実に相手に脳震とうを起こさせたブラック。
 あの長身とこのペースでいくとまず間違いなく炭谷壬だろう。ちなみに男子バレー部エースアタッカーで2年特進U−Cだ。
 何だか女子に人気があるようでクラスの子達も炭谷のことを度々話していたように英和は記憶している。
 確かその時に聞いた彼の性格は口数が少なくストイック。嘘だろ、という気分でいっぱいだが多分現実なのだろう。
 一通りの回想を終えて英和は思う。誰が彼らのことをこんな変態だと想像するだろうか、と。
 今さっきまで自分が信じていたものと現在進行形で目の前にいる変態達との落差にガックリと力が抜けていく。
「では、卓球グリーン! これからはオレ達と共に球技戦隊エースレンジャーとして校内の悪を駆逐するべく頑張ろう!」
 自己紹介だか演説だかを終えたらしい変態……いやエースレンジャー達はみんなヘルメットを取って英和に握手を求めてきた。
「ああ、はい……」
 力なく出された右手を力一杯握り返し挙句上下に振ってまでくれるレッド。
 ブルーもブラックもグラさんもにこやかにその光景を見つめている。
 しかしこの人達は何がしたいのだろうと、半ば思考することを放棄した頭でぼんやりと英和は思った。





少なくともオレは変態じゃない。



学校ぐるみのようです。