登場人物


登場人物A:普通。平均という意味ではないので苦手なものも得意なものもあるが特出している訳でもないので普通。適当にモードをメイクするがムードメイカーと呼べる程ではない。同窓会の時に居ないと気付かれて少し話題にはなるが特別残念がられもしない程度に普通。やる事成す事普通の域を出ない普通の人。ちょっと珍しい事やってもまあそういうこともあるよねで済まされるレベル。強いて言うならツッコミだけが取り得。そんな事実を本人は認めたがらない。

登場人物B:突っ走り型変人。自らの奇行(本人は奇行とは思っていない)に誇りとプライドを持っている。変人と言われようが気にせず自分のやりたい事を貫く。そんなオレカッコイイとかは思っていないがバカにされると凄まじく怒る。一応話は通じるが一貫して変人なので時にアドバイスは全く参考にならない。でも時々は参考になる。一本筋は通っていたりもするがやはり変。4人の中で1番まともに見えることもあるがやはり変。

登場人物C:天然型変人。自分のどこが変なのか自覚していない。変人と言われても気にしない。普通と言われても気にしない。天然が故に騙されやすいが本人が騙された事に気付かないので多分幸せな人。3人の中で唯一意図せずツッコミをスルーする能力を持つ。蔑ろに扱われても気にしないので扱いは1番簡単。思いつきで行動するので本人にすら行動の予測が出来ない。

登場人物D:思い込み型変人。何かは分からないが凄まじい強迫観念で何か(黄色い線の外側に出てはいけないとか蛙は人類を滅ぼす為に宇宙から送り込まれた刺客だとか)を思い込んでいる。一見普通に見えるが少し話すと変人であり、慣れて来ると普通に思えるがやはり変人である。恐らく3人の中では1番真っ当に話は通じるが思い込んだものに関しては一切の冗談が通じなくなる。割と流されやすい。





夕方、どこかの部屋。学校の空き教室に見えなくも無い。
各々好きなことをしていると、突然登場人物Aが立ち上がる。

登場人物A「常々考えていたんだが世の中には『普通の人間が普通でないことに巻き込まれる』というパターンのお話が多すぎやしないだろうか」

登場人物Bのみ作業を止め、登場人物Aを見る。

登場人物B「そうか?」
登場人物A「そうだよ。ギャグにしろシリアスにしろファンタジーにしろ、少なくともそういう『パターン』は確立されている訳だよ」

ここで初めて登場人物Cと登場人物Dも作業を止める。

登場人物C「まあそうかもなぁ。『普通の人間』が神や宇宙人や未来人や異世界人や地底人や超能力者に出会う話とか結構ゴロゴロしてるし」
登場人物D「そこまでぶっ飛んだ『非普通人』じゃなくてもいわゆる『変人』に『普通の人』が巻き込まれて構成されるギャグも多いしな」
登場人物B「それはつまりオレ等が『変人である』と言っているも同義な訳だがな」
登場人物A「気にするな。事実だ」
登場人物B「で? それがどうしたんだよ」

登場人物A、勿体ぶって自分の居た場所から少し移動する。

登場人物A「それでだな、この物語もご多分に漏れず『普通の人』であるオレが『変人』であるお前らに巻き込まれて繰り広げられる話だろ」
登場人物B「メタ的発言ありがとう。物語の登場人物としては些か問題のある発言だが確かに的は射ている」
登場人物C「で、だから要するにお前は何が言いたいのさ」
登場人物A「つまりテンプレ的設定からこの物語を逸脱させる為に、主人公たるオレを『普通の人』という枠から外してみたいと思うということだ」

ノリノリの登場人物A。冷ややかな登場人物B。あまり意味の分かっていない登場人物C。傍観する登場人物D。

登場人物B「要するに『脱・普通人』するぜ!ってことだな」
登場人物C「するの? 『脱・普通の人』」
登場人物A「したいと思っているが具体的な案がない」
登場人物B「じゃあ諦めろよ」
登場人物A「せめて相談に乗るフリくらいはしてくれよ」

あくまでも冷ややかな登場人物Bに懇願する登場人物A。

登場人物D「で、お前の求める『普通じゃない人』っていうのはどんなのなんだよ」
登場人物A「とりあえず『変人』ではない」
登場人物B「ぶっ飛ばすぞテメェ」
登場人物C「自分が『変人』である自覚はあるんだね」
登場人物B「うるせぇ黙れ。大体お前も同じようなモンだろうが」
登場人物C「オレは別に『変人』で良いもん」

揉める登場人物Bと登場人物Cを無視して話を進める登場人物D。

登場人物D「まあとりあえず『変人』が嫌だと言うんならお前がなりたいのは何だ? 『ぶっ飛んだ設定』である神や宇宙人や異世界人か?」
登場人物A「なんかね。そこまでぶっ飛んじゃうとイキナリな気がするんだよね」
登場人物B「お前が急に『普通の人』じゃなくなるのもイキナリだがな」
登場人物C「じゃあ無難に超能力者的な?」
登場人物D「透視したりスプーン曲げる系か? それとも波動系攻撃が出来る系か?」
登場人物C「どっちでも良いよ」
登場人物B「まあそんな能力を身に付けられるのかどうかは別問題だがな」
登場人物A「身に付けられなかったらただのデンパさんじゃない」
登場人物B「『非普通人』になりたい、って言ってる時点で似た様なモンだろ」
登場人物C「実は親父は魔王でした! とか、親父が世界的超人でした! とか?」
登場人物A「なんか別の意味でありがちだよね、ソレ」
登場人物B「中盤から後半にかけてバトルメインになりそうな設定だな」
登場人物D「過去に記憶と共に封じられた呪われし能力が云々」
登場人物A「それ何て黒歴史?」

登場人物B、飽きたらしく座り直し適当な方向を向く。

登場人物B「じゃあもういっそ死んで幽霊とか妖怪とかになれ。もしくは何か他のモンに転生しろ。そしたら普通じゃないから」
登場人物A「確かにそれは普通じゃないけどオレまだ現世に未練があるからね」
登場人物B「丁度良いじゃねーか。幽霊になれるよお前。幽霊になる資格バリバリあるよ」
登場人物A「良くねぇよ! 生きたまま『普通』の枠から脱したいんだよ!」

登場人物A、「死にたくないのー」等と騒ぐが、登場人物Bは冷めた様子のまま作業再開。
そこら辺にあった本を弄っていた登場人物C、突然立ち上がり、言う

登場人物C「作者とかどうよ! 実はオレがこの物語を書いていたんだ、みたいな感じで」
登場人物A「それって普通じゃないけど普通だよね? キャラ的には『普通』だし、物語の斬新さ的にも普通だよね?」
登場人物D「数百年前既にやってる人間が居るしな」
登場人物B「作者=主人公じゃないがホームズシリーズなんかはソレ系だな」
登場人物A「ホームズは普通じゃないけどワトソン先生普通だよね?!」
登場人物C「えー、良いじゃん普通」
登場人物A「君、オレの話聞いてた?」

「普通好きだなー」「お前の好みじゃなくて」等、登場人物Aと登場人物Cで無駄なやり取り。

登場人物B「お前は普通は嫌だと言うが、『普通』があってこその『奇人変人』だぞ?」
登場人物D「比較対照が無いと何がどうおかしいのか分からんからな」

登場人物B、唐突に立ち上がり演説するように。

登場人物B「そう。つまりこの世界は『普通で何の特徴もない』お前がいてこその世界なんだよ。お前は世界の基準なんだ! 『何の特徴もない一般人』であることに誇りを持て!」
登場人物A「いや今までそう思ってたけど! そう思うように努力してきたけど! 世の中には『普通』の居ない話とかあるじゃん!」
登場人物B「この話はそういう話じゃねーんだよ」
登場人物A「うっさいわー! オレはもう『普通』は嫌なの! 人物像に『特殊』が欲しいの!」

ばたばたと駄々を捏ねる登場人物A。

登場人物D「と言いつつアレ嫌コレ嫌じゃなぁ」
登場人物C「もう『変人』になるしかないよ」

登場人物A、急に動きを止め冷静に。

登場人物A「じゃあ良いよ。『変人』で良いよ。それで良いから何か設定頂戴よ」
登場人物B「気ぐるみ着て、これはオレの皮膚だ! 中の人など存在しない! って言い張れ」
登場人物C「チャームポイント的なもの付けて変な髪形にして変な動きすれば?」
登場人物D「適当な歴史上の人物になりきって見知らぬ人間に無茶な注文しまくれ」
登場人物A「すみませんオレにはちょっとレベル高すぎるんでもうちょっと簡単なのにして頂けませんか」

登場人物B、登場人物C、登場人物D、少し考える様子を見せる。

登場人物B「コート以外身に着けない主義とか」
登場人物C「水以外口に出来ない身体になるとか」
登場人物D「語尾にぽよーん付けないと喋れないとか」

登場人物A、大人しく聞いている。
全ての意見を聞き終わり、暫く考え、急に爆発するように

登場人物A「むしろレベル上がっとるわー!! 何なのお前ら、オレを社会的に抹殺したいの? いや登場人物Cのは実際死ぬが」
登場人物B「グダグダグダグダうっせーな。お前が『脱・普通』したいって言うから考えてやってんのによ」
登場人物A「いやあの程度考えようよ! お前の実践したらオレ捕まるよ?!」
登場人物D「ぽよーんは大丈夫だろ」
登場人物A「何が大丈夫なんだよ! オレがおはようぽよーんとか言ったら引くだろ!?」
登場人物B「っていうかマジ気持ち悪いわ」
登場人物A「汚物を見るような目止めて! オレだってこんなこと言いたくないわ!」
登場人物C「水…」
登場人物A「栄養取らないと死ぬでしょ?! オレ植物じゃないから! 光合成できないから!!」
登場人物D「登場人物A、お前にはこんな立派な才能があるじゃないか。そう、ツッコミという才能が」
登場人物A「そんな『普通』の代名詞のような才能いらないー! オレはもう『普通』って言われたくないのぉー」

登場人物A、「お前らに『普通』の苦しみが分かるかー!」等と叫びつつ悶絶する。

登場人物B「じゃあ、それは逆手に取れば良いんじゃねぇの」
登場人物A「ん?」
登場人物B「普通であれば『自分が普通であること』を必要以上に主張しないだろ? むしろそういう主張は『普通じゃない』奴がするもんだ。だから、逆に『オレは普通だ!』と言い張ればお前は『普通じゃない』ということになる」

登場人物A、唐突に元気になる。今までのが嘘のような晴れやかな笑顔。

登場人物A「おお、なるほど! その手があったか!」
登場人物D「良かったなー」
登場人物C「おめでとうー」
登場人物A「ありがとう! これで今日からオレも『非普通人』だぜ!」
登場人物B「はいはい」
登場人物A「じゃあ今日はここら辺で解散な!」

スキップしながら遠ざかって行く登場人物A。
適当に見送る登場人物B、登場人物C、登場人物D。

登場人物B「…まあ、アイツが普通であることを主張した所で異論は出ないだろうがな」
登場人物D「確かに」
登場人物C「ことごとく『普通』だもんね」

暫し沈黙。
遠くから小さく「オレは普通だー!」という声が聞こえてくる。
嬉しそうな登場人物Aの声がリフレインする中、照明徐々に消える。

-幕-








どうにか主人公の『脱・普通』が出来ないかと思ってたら出来たのがコレだよ!