「……食べたいの?」
「いいえ」
 オレの問いかけは、ヒトの食事風景をまじまじと見詰めてくる人間に対して発するにはとても適切なものだったと思う。
 しかし、問いかけの返答は否定と来た。
 それなら何だ、珍しいおかずでも入っていたか。
 今オレの前にある弁当は何の変哲も無い至って普通の弁当だと思うがお前とオレの『普通』というのが同じという証拠は無いからな。そういう可能性もあるだろう。
「何か変なモノでも入ってたとか?」
「至って普通の弁当を前に何を」
 ですよねー。
 じゃあ何か。オレの食べ方が物珍しかったのか?
 でなければお前の好物でも入ってたか?
 いやでも食べたい訳じゃないんだよなぁ…。
「何で見てんだよ」
「見られて何か不都合でも?」
 苦肉の策で直接理由を聞いたが、理由を答えず一刀両断と来た。
 何だお前理由答えろよ理由。答えられないのか。
 大体不都合とかね。まあ別に実害という意味では無いですけどね。ちょっとオレが食べるのに気まずくなるだけで。あ、それが実害か。
「質問に質問で返すんじゃない」
「趣味」
 短いなオイ!
 というか何だ趣味って。人の食事風景を見るのが趣味って。
 はたから見たらひもじい子だよお前。かわいそうな目かすげぇ嫌そうな目で見られちゃうよお前。
「何で」
「好きだから」
 うんまあそうだろうね。嫌いな事は趣味にしないよね。
 嫌いな事趣味にするとかどんだけー。
 いやスミマセン言ってみただけです自分で言っておいてあまりの寒さに寒気がしましたスミマセン。
「そうじゃなくて。何で食べてるトコ見るのが好きなのよ」
「無防備だから」
 えー、なにそれ。無防備=好きっていう図式がオレにはちょっとよく分からないんだけど。
 無防備なのが好きなの? 無防備なら何でも良いの? ってことは銭湯とかも好きなの?
 ていうか無防備なのが好きってお前何か制圧でもしたいの? 一体誰と戦っているの?
「無防備だから好きなの?」
「うん。寝てるの見るのも好き」
 確かに寝てるときって無防備極まりないからね。
 ってそうじゃなくてさ。何で無防備が好きなのよ。何なのよ。
「でもお前って知らない人とご飯食べたりするの好きじゃないよね」
「無防備だからね。知らない人と自宅でくつろいだりしないでしょ。一緒だよ」
 いやまあ何となく言ってる事は分かるけど。
 けどその理屈で言うとお前は人の家の中を覗いてるのと同レベルという事になるぞ。変態さんだぞ。
「ああそう」
「そう。だから気にせず食べてください」
 だからじゃないでしょ! 色々言いたい事いっぱいあるんですけど! 何なのお前! 何なのもう!
 とか思いつつ面倒になったので食事を再開するオレ。お腹は空いてますからね。食欲には勝てません。
 ……とは思うものの。だーっもう食べ難いったらありゃしない! まじまじと見るな!







オール脳内ツッコミ。