ぱちん、と火が爆ぜた。
風の無い夜にはその小さな音でさえよく響いて聞こえる。
(そろそろ、か)
時間を確認し、ガイは焚き火の前から離れようと腰を上げた。
女子供ばかりのパーティーで野営をしようということになった時、年嵩である自分とジェイドが交代で番をすることになるのは当然の結果だろう。
当然始めから彼女等が素直に納得した訳ではなく、(曲りなりにも軍人であるという主張をしていた者もいたがルークなどは単に子ども扱いされたくないという意地からだろう)当人たちはやると主張していたが、それもガイとジェイドで何とか丸め込んだのだが。
寝ている者たちを起こさぬよう、足音を消して歩く。
――実はこの瞬間を最も楽しみにしているのだと知ったら、ジェイドはどんな反応をするのだろう。そんな事を思い、ガイは苦笑した。
共に行動するようになってから間もない頃は、ガイの番の時間でもジェイドは起きているようだった。
明らかに眼を開けていた訳でも、直接聞いた訳でもないが、多分事実だろう。それは不意に魔物が襲ってきた時、番をしていたガイが起こすまでも無くジェイドが臨戦態勢に入ったことからも分かる。
恐らく、信用されていなかったのだ。職業柄か性格なのかは知れないが、得体の知れない人間に無防備な姿を曝すなんて出来ないのだろう。ガイ自身も似たような気持ちであったし、それを非難するつもりは毛頭無いが。
ゆっくりと歩を進める。
(まだ起きない)
それが、様々な出来事を共有しお互いの過去を知って行く中で変化していった。完全に、という訳ではないが腹を割って話をするようになったし、戦闘中に背中を預ける事だって出来るようになった。
だが、一番それが如実に現れているのは多分今この時だろうとガイは思う。
始めの頃、ジェイドはガイが腰を上げただけで目を覚ました。いや、寝ていなかったのだから目を開いただけなのだろう。元々気配には敏感なのだろうが、あれには流石のガイも驚いた。極力音を立てないように立ち上がったと思ったら、向こうから声をかけてきたのだから。
だが、始めは立ち上がっただけで目を開けたジェイドが、次第にガイが歩き出さないと目を開けなくなり、更には近付かないと起きなくなったことをガイは知っている。その距離が徐々にジェイドに近付いていっている事も。ジェイドも、もしかしたら意識しているだろうか。
それに気付いた時は、自分の存在がジェイドに許されているのだと感じて妙に嬉しくなったものだ。
まだジェイドに触れられる程近くに行くことは出来ないが、それでも、日に日に短くなって行く距離が何故だかとても愛おしく思えた。
1歩、また1歩。ゆっくりと確認するように歩む。
「…ガイ?」
「ああ。そろそろ交代の時間だから」
「そうですか」
潜めた声で酷く簡素な会話を交わす。
昨日より僅かに、けれど確実に近付いている距離に少し喜びを感じた。
いつか、ジェイドに触れる事が許される時が来るのだろうか。そんな日を、望んで良いのだろうか。
まだ見ぬ日のことを考えながら、それでも今はただこの時間が幸せなのだと思った。