フーブラス川到着~アリエッタ襲撃前

水は怖いぞとルークに言うガイを見てジェイドはおや、と思う。
バチカルは海に面した都市だが、居住地区は高台に、王族が住む場所はその更に上にある。また、地形的に港近辺以外は水害とは無縁に近い都市である筈だ。水運等に携わる職業であるならまだしも、公爵家の使用人であるというガイがそんな場所に関わるとは思い難い。
だというのに彼はまるで水害を身近に経験して来たかのように語る。
「ガイはバチカルの生まれなのですか?」
「いや?まあ、海は好きだけどね」
ジェイドのした質問にガイは答えなかった。
キムラスカのどこか水辺の街の名を出せば一先ず納得もしようというのに、ガイはそれをせず話題を変えることを選んだ。
下手な嘘を吐いてボロが出るのを避けたのか或いは、キムラスカの地理に然程詳しくないのか。先程セントビナーでマルクトの地理に詳しいことに疑問をぶつけた際卓上旅行が趣味であるとさらりと返した時とは異なり、やや不自然に話題を変えた所を見ると後者なのではないか。
ジェイドはガイに疑いの目を向ける。マルクトの地理に詳しい理由を卓上旅行と返したのは、以前から想定し用意していた答えであったのか も知れない。
神託の盾であるティアという少女も何か隠しているようだが、ジェイドはそれよりも明らかに胡散臭い好青年に対して興味が沸いた。
彼の出方や正体によっては自分の目的の障害になり得るという警戒が少々と、暇潰しになるという理由が少々。重要任務中であるとはいえ、イレギュラーで我が儘な子供の子守りもしなければならないのだ。そのストレスの捌け口があっても良いだろうとジェイドは誰にでもなく言い訳をして、さてどう攻めてやろうかと楽し気に思案を始めた。