悲愴観念

「そうですか、彼が死にましたか」
 ガイが死んだ。
 その一報を伝えた時彼はそうとだけ言った。
 あまりにも呆気ない台詞に血が上り、拳の一つでも食らわせてやろうかと思ったが、止めた。
 彼が、自分は死が理解出来ないのだと言っていたことを思い出したから。死が悲しいものだと分からないのだからあんな反応も無理ないのかもしれない。
 仮に彼が死を理解出来るのだとしても、彼は軍人だ。人の死に取り乱すなんてことは出来ないだろう。彼の主だって、懇意にしていた軍人が死んだ時信じられない程に冷静にそれを受け止めていたじゃないか。
 感情を押し殺すことが出来る人間を大人と呼ぶのなら、彼等は間違いなく大人だ。それを羨ましいとは思えないけれど。
 なら軍人になどなりたくないと思った自分は多分、子供なのだろう。
 ガイが死んだことを悲しめないのなら自分は大人になれなくて良い、等と酷く馬鹿げたことを考えた。
 彼等だって悲しみたいだろうに。自分のように憚ることなく泣きたいのだろうに。
 そして、彼等は一体どこならで悲しむことが出来るのだろうと思う。独り誰も居ない場所でやっと悲しむことが許されるのだろうか。
 それは酷く哀れなことだと思った。