只の衝動と云えば貴方は笑うだろうか

「抱き締めさせて頂けませんか」
 突然、そうそれは突然。唐突としか言えないようなタイミングでジェイドはそう言った。
「何だよイキナリ」
 だからガイが不可思議そうな顔をしてこう返したとて何の不思議もない、むしろ当然のことだろう。
「いえ、貴方が物欲しそうな顔をしているなと思いましたので」
「オレはそんな顔してないし、大体何でそんな事聞くんだ」
「いきなり抱き付いて、怒るのは貴方でしょう」
 ガイの至極当然であろう質問をさらりと躱すジェイド。
「それで、抱き締めさせて頂けるんですか」
「何ワケ分かんないこと言ってんだこのオッサン」
 気色悪い、と切り捨て、ガイはジェイドが唐突に妙な発言をしたことで中断されていた作業に戻る。
「つれないですねぇ」
「無駄口はたいてる暇があるならアンタも働いてくれ」
 忙しいのは見て分かるだろう、さっさと終わらせないと陽が暮れちまうぜ。
 そうとだけ告げるとガイは再び単調作業の中に埋没していった。
 その様子を見、かの死霊使いが口許に苦笑の笑みを湛えながら溜め息を吐いたことは誰も知らない事実である。