ジェイドとキスをするのは好きだ…と思う。
ハッキリ好きだと言い切れないのは、軽いキスであれば気恥ずかしさが真っ先に出てきてしまうからであり、深いキスならそれどころでは無いからである。
軽く触れ合うだけのキス、唇を食まれるようなキス、ぬるりと侵入してきた舌に口腔を犯されるようなキス、或いは舌を絡め合い互いを貪るようなキス。
様々なキスをしてきたが、そのどれもが心地良かった。肉体的な快楽というよりも、精神的に満たされる至福。
している最中はいつも余裕など無いので好きかどうかにまで頭が回らないのだがそれでも嫌だとは思わないし、こうしてジェイドとのキスを思い出して幸せな気持ちになるのだから、きっと好きなのだろう。多分。
ジェイドは度々、ガイとのキスが好きだと言う。ジェイドが素直にそんなことを言うのは大体情事中でガイはそれを深く考えることなど出来ないでいたし、あまりよく覚えてもいられなかったのだが。
今日はたまたま早く目が覚め、隣で眠るジェイドの顔を見ているうちにふとその事を思い出したのだった。
「人の唇を見詰めてどうしたんですか」
形の良い唇が少し意地悪くつり上がる。いつの間にか目を覚ましていたらしい。
「いや、旦那は俺とキスするのが好きだって言うけど、俺はどうなのかなと思って考えてた」
「で、結論は?」
「好き…だと思う」
正直に答えると、予想外の回答だったのかジェイドはキョトンとした顔をした。まあそういう顔にもなるか、とガイは苦笑いをする。
冷静に考えれば、恋人ととのキスを好きかどうか考えた結果が「好き…だと思う」などと曖昧なものでは色々と自信を無くすだろう。少なくとも俺ならヘコむな、と自らの意見を棚に上げてガイは思う。
「なんですかそれ」
「いや、嫌いでないのは確かなんだが、よく分からないんだよ。すま…」
既にあんなことを言ってしまった後では無駄かも知れないが、少なくとも誤解を招かないよう出来るだけ弁明をしよう…とした言葉はジェイドに唇を奪われた事により途中で途切れた。
軽く唇を触れ合わせた直後、今度は下唇を軽く食まれ、侵入してきた舌に歯列を舐められる。
熱い吐息が零れた。
「どうです?」
「え?」
「また私とキスしたいと思いますか」
そう問われて、少し考える。
キスは気持ちが良い。だが、それを別にしてもまたジェイドとキスをしたいと思う。
「ああ、思う」
例えジェイドが今ほどキスが巧くなくても、仮に下手だったとしても、きっと自分はキスをしたいと思うだろう。漠然とだがそれはきっと確定された事実なのだとガイは思う。
「なら、それは好きだということですよ」
「そっか。よく分かった」
気付いてしまえばこんなにも単純なことだったのかと、ガイは笑う。
「俺も、ジェイドとキスするの好きだ」
何百回でも何千回でも何万回でも、ジェイドとキスをしたいと思う。この気持ちを好きと言うなら、間違いなく自分はジェイドとのキスが好きだと言える。
「それは良かった」
ジェイドは幸せそうに笑うと、間近でガイを見詰める。
「私も貴方とキスするのが好きなんですよ」
「知ってる」
クスクスと笑い合うと、再び二人はキスを交わした。