残念だけど貴方が正しかった

 「貴方は本当に復讐を遂げたかったのですか?」
「さあどうだろうな」
 質問をはぐらかすガイの言葉は震えていた。
「本当に復讐を遂げたいと考えるならキムラスカ出身である母方の姓を名乗るのは不利益以外の何物でもない。全く関係のない名を名乗った方が安全でしょう。ですが貴方はそれをしなかった。剣の流派にしてもそうです。ガルディオス家に連なる者にしか伝えられていないシグムント流を使うことを貴方は躊躇わなかった。いくらアルバート流の派生であると言えど、見る人が見ればアルバート流ではないとすぐに分かることであるにも関わらず」
 非情なまでに事実を捉えた言葉と紅い瞳がガイを射抜く。
 逃げ場など何処にも無かった。
「――生きてなんていたくなかった死んでしまいたかった。けれど死ねなかった。姉上達はオレに生きて欲しいと望んだから。オレは姉上達の命と引き換えに姉上達に生かされたんだから。死ぬなんて許される筈がない。そりゃあ憎かったさ総てを殺して行った公爵が。憎かった。憎かったんだ。殺してやりたい程に憎かった。そしてオレは他に方法を知らなかった。公爵に復讐する以外姉上達に何が出来るのか、何をすべきなのか、何の為に生きれば良いのか、何も分からなかった。
 潜伏する時にセシルの名を名乗ったのもシグムント流を使い続けたのも意地だったんだろうな、きっと。ホドは、ガルディオス家は公爵に踏み躙られた。これ以上公爵に屈するのが嫌だったんだと思う。子供の拙く下らない意地さ。それで素姓がバレて殺される事になろうが構わなかった。オレの…ガルディオス家の意地が、誇りが折れる事に比べれば。
 ああうん、でも確かにオレは殺されたかったのかもしれないな。元より生きてキムラスカから出られるなんて思ってなかった訳だし。復讐を果たしたにせよ果たせなかったにせよその後の事なんて考えてなかったんだから」

 
 
 

「それは生きる事に執着しつつも深層心理では死にたがっていたということですか?」
「…まあアンタがそう言うならそうなんだろうな」