仲良しナイトメア - 3/3

「ちょっと、ガイ」
 廊下にガイが一人で居ることを確認して声をかける。
 広いとはいえ、今や30人以上が生活するこのアドリビドムで一人きりで居るというのは案外難しい。そんな状況でガイが一人で居るところを発見出来たのは幸運だった。別に他人に聞かれて不味いことを話すつもりはないが、出来るなら当事者だけの方が良い。
「イリアか。何の用だい?」
 人好きのする笑顔で振り向いたガイを見て、やっぱり女の子が騒ぐのも無理のない人物よねとイリアは思う。物腰も柔らかく紳士で気品があり顔も良いとくればモテない方がおかしい。まあ、イリアの好みではないのだが。
「アンタ、この間スパーダと依頼に行ったでしょ」
 この間――スパーダが帰ってくるなりルカに抱き付き訳の分からない事を言い出した日、一緒に居たのはガイ一人だった。依頼の管理をしているチャットに聞いたのだから間違いない。
「ああ、行ったよ」
「スパーダに何言ったのか知らないけど、あんまりいじめないでくれない?」
 ガイの事だ、イリアも文字通りスパーダをいじめたとは思っていない。そもそも普通に何かをされたり言われたりしたのならスパーダは黙ってやられる性分ではないし、直接理由を言わずとも愚痴なり何なりを喚くだろう。
 だというのにあの日のスパーダは好きだの何だのと言うだけだった。
 大方、やりとりか感覚の相違で疲れただとかそういう事なのだろうが、あのスパーダがあそこまで疲れ果てるというのも妙な話だ。
「あー…。そんなに、ダメージ受けてたのか。スパーダ」
 当のガイには心当たりがあったらしく、そんな言葉を返してくる。何をしたのかは知らないが、案外この青年も食えないのだなと思う。
「まあ、大したことはないんだけど。アイツがあんなんだと調子狂うのよ」
 ルカならともかく、と言うイリアにガイが微笑みを向ける。
「何よその顔。ムカつくわね」
 それを見咎めて指摘すると、思わぬ返答が返ってきた。
「いや、ごめん。仲間想いなんだなと思ってね」
「何よそれ」
 アタシは別に、と続けるイリアにガイは悪い悪いと苦笑しながら謝った。本当に悪いと思っているのだろうか。
「ともかく、今後そういう事がないように気をつけるよ」
「…なーんか納得行かないけど、まあいいわ」
 そういう事だからヨロシク、と言うとイリアは踵を返した。
 とりあえずこれで大丈夫だろう。全く、世話のかかる友人である。