さて、真相は

 銃を手にしたガイが叫ぶ。その銃口は人質を取ったジェイドに向けられていた。
『撃つぞ!』
『撃てるものなら撃ってご覧なさい。この子が見えないのならね』
 そう言ってジェイドは顎で腕の中の人質を差す。抱えられた影は動かない。
『その子のことを撃てなくても、お前は撃てる』
 硬い表情でガイはそう告げた。2人の距離はさして近くない上に、手持ちの銃の射程から出てしまっている。しかしそれでも、言葉通りの結果を出す程度の自信があった。それは過信などではなくただの事実だ。
『その“ゴム弾で”ですか?』
 ガイを揶揄するように微笑うジェイド。暗に、ガイが所属している組織が公的に人を殺せないのは分かっていると、そう言っているのだ。更には、その程度で自分は止められない、と。
『試してみるか?』
 人を殺せば今の立場は失われる。立場だけでなく、今持っている全てのモノを失うことになるだろう。ガイが所属するのはそういう組織だ。だがガイはそれを理解しつつも、挑発を止める事は無い。
『どうぞ。貴方にその勇気があるのならば』
『死んで後悔するなよ』
『死ねるものなら、後悔しましょう』
『今の言葉、覚えておけよ』
 数秒の静寂の後、銃声が轟いた。

 腕に抱えていた人質――ダミー人形を放り投げ、長い髪の毛をかき上げながらジェイドが溜め息を吐く。
「お疲れさん」
「貴方もね」
 実弾どころかゴム弾すら詰まっていない銃をクルクルと回しながらガイが言う。
 数秒前まで2人の間にあった緊迫感は既に微塵も無い。
 本当にこれがさっきまで犯人とそれを追い詰める役をしていた人間と同一人物なのだろうか、とルークは思う。それ程までに今、2人の間に漂う空気は先程まで漂っていた殺気混じりの緊張感とは一変して穏やかだ。
「ルーク、アッシュ。どうだ勉強になったか?」
 先程の2人の様子を傍らで見ていた赤毛の子供等に言葉を向けると、2人は黙り込んでしまった。
「アナタ方にはまだ早過ぎましたかねぇ?」
 馬鹿にしたような軽い口調でジェイドが言うとすぐさまルークが「そんなことねぇ!」と噛み付いたが、続く言葉が出てこない所を見るとやはり難しかったのだろう、とガイは思う。
 同じことをジェイドも感じたようで、先程とは違う意味での溜め息を吐いてから、言葉を紡ぐ。
「嘘を吐くときに大切な事は、真実を言い当てられても嘘を吐き通す事です」
 それを聞き、ルークとアッシュは首を傾げる。
「要は『本当の事を言われても、それをハッタリだと認めないでハッタリをかまし続けろ』って事だ」
 ジェイドの言葉を引き継ぎ――多少噛み砕いて――ガイが言った。
「…分かった」
 多少間は空いたが、ルークは完全ではないだろうが理解したようだ。だが、アッシュは納得が行かないという顔をしている。
「だが、お互いがお互いにそうしていた場合はどうする?」
「その時は、なあ――」
「――ええ」
 アッシュの質問に、ガイとジェイドは顔を見合わせて答える。
「どちらかがボロを出すまで腹を探り合うだけ――」
 そう言う2人は常の様に笑っていたが、その時アッシュは2人の笑顔に何か薄ら寒いものを感じた。


仲が良い、と見せ掛けて実は腹の探り合い真っ最中の殺伐とした2人。