ド、と、音がした。
それは石や木の根に足を取られ思わず転倒した時の様な、それでいて抵抗の意思が全く感じられぬものだった。
後ろを振り向けばそこには案の定――今この場には2人しか居ない――愛しい人が倒れている。
戦闘中はもちろん普段の生活の中でも素早く立ち回る彼がすぐさま立ち上がる動作に入らないことを訝しみ近付いてみれば、――やはり、と言うべきか、意識を失っていた。
素早く彼の身体を触り目立つ外傷がのないことを確認すると、ジェイドは舌打ちをせずにはいられなかった。
何故もっと早く彼の変調に気付く事が出来なかった?目立った外傷が無いということは病的な何か――或いはカースロットで、彼は倒れたということになる。外傷の見られない怪我という場合もあるが、先の戦闘を見る限りそれは無いだろう。いずれにせよ、予調は見られた筈だ。
彼が己の不調を直隠しにし悟られまいと振る舞う人間だという事は判っていたというのに。だからこそ自分がよく見ていなければならなかったのに。
脈と体温、そして呼吸を確かめながらジェイドはそんな思いを抱いた。もう少し注意してさえいれば。
嗚呼だがしかし今更後悔した所で状況は何一つ変わらないのだ。
そう気を取り直し、彼を肩に担ぐ。生死に関わらず一様に意識を失った人間は重い。(軽い、だなんてあってたまるものか!)
だがその時、ジェイドは彼のことを軽く感じたのだ。ただそれは物理的にではなく、常に仲間内で頼れる兄貴分として立ち回っている彼の、精神的な弱さを目の当たりにしたからなのだろう。
ジェイドが彼を支える一瞬、木の葉が擦れ合う音よりも小さな声で確かに彼は。
遠い日に失った大切な人のことを呼んだのだ。
もし自分が過去に過ちを犯さなければ、なんて考えてしまうことそのものが罪だろうか。