高い戦闘力、どこか優雅さのある身のこなし、そしてマルクトへの土地勘。只の使用人というには無理がある。
彼が敵だったとして、自分は彼を殺す事が出来るだろうか?
この槍で貫く事が、この譜術で貫く事が、出来るだろうか?
答えはイエス。ノーは在り得ない。
自分は軍人だ。歳若くもなく、それなりに実戦経験を積んだ。おまけに、死霊使い等という通り名まで付いたような。
彼を殺すのは簡単だ。彼が敵だと分かれば欠片の躊躇いも無く彼を殺す事が出来る。それが、事実だ。
だが、恐らく。彼を亡き者にした後、きっと自分は酷い後悔に苛まれるのだろう。
己のとった行動は最善の手だ。それを頭では分かっているにも拘らず。
その感情の名前を私は知らない。知るべきではないのだ。