しまったと思った。ルークはともかく、客人であるティアがあの剣に興味を示さないはずが無いのだ。ましてやあの剣はその為――やって来た客人等に公爵の武勇伝を聞かせる為――にあそこに飾ってあるのだから。だが、自分から話を振っておいて、会話を投げ出すような事は出来ない。第一使用人なら知っていて然るべき話なのだ。そう、公爵家の使用人なら話さねばならない。例えそれが―――
ルーク達が居なくなったのを確認し、隠れるように溜め息を吐いた。
話す声は不自然でなかっただろうか。
きちんと笑えていただろうか。
剣の話になった時の動揺を悟られはしなかっただろうか。
押し殺した感情に気付かれなかっただろうか。
「まだまだ、だな…、オレも」
「何がまだまだなんですかー?」
「っ、ジェイド…!」
嗚呼なんてツイてないのだろう。よりによって、この軍人に聞かれてしまうだなんて。
「玄関先にある剣について話をしていた様ですが」
「聞いてたのか…」
「ええ。聞こえてしまったので」
何が聞こえてしまっただ。聞き耳を立てていたとは言わないが、どうせ端から聞くつもりだったのだろうに。
「ファブレ公爵が戦利品として持ち帰って来たということは、あの剣と、首級、はマルクトの人間のものだったということになりますね」
「まあ、そうだろうな」
わざわざ首級という言葉を強調して、随分と分かりやすくカマをかけてくれるものだ。だが敢えてそこは無視をする。ジェイドだってこの程度でボロを出すとは思っていないだろうが。
「ホド戦争」
その単語に心臓が跳ねた。それだけの事に動揺してどうする!だからオレはまだまだというのだ。
「どうして暈したんです?使用人の貴方が知らない訳無いでしょうに」
「…ルークには刺激が強いと思ったんだよ。実際、大将の首だって言っただけでビビってただろう?」
こんな程度でこの軍人を誤魔化せるとは思っていないが、それでもそんな奇跡を願う。願わずにはいられなかった。まだ何も、復讐も、ルークとの賭けも果たしていないのだから。
「…そうですか」
「じゃ、悪いけど仕事が溜まってるから」
そう言ってその場を逃げ出した。
不審に思わせただろうが、もう会うことも無いのだからと自分を言い聞かせて。
また一緒に旅をすると分かっていればもっと上手く立ち回れていたかも知れない?
あり得ないな、相手はあの死霊使いなんだ。目を付けられた時点でお終いだったのさ。