まるで、誰かの為にしか生きることの出来ないようだと思う。
以前は『一族の為』復讐を遂げることだけを目標として、そして今はやはり『一族の為』更にはかつての『ホドの人々の為』に伯爵としての責務を果たそうと、彼は生きている。
(…気に入らない)
そこまで考えてジェイドは思わず立ち止まった。気付いてしまった感情に、驚きを隠せない。――今、自分は一体何を思った?
ガイが彼自身の為に生きようとしないことに憤ったのなら、恐らくここまで驚きはしなかっただろう。何故ならそれは彼を知り、彼に幸せに生きて欲しいと願う人間なら誰しも抱くであろう感情だからだ。だが、ジェイドは確かに、ジェイドではない『他人の為』に生きるガイに腹を立てた。誰かの為に生きるのならばいっそジェイドの――自分の為に生きれば良い、と、そう思ったのだ。そんな自分自身に、ジェイドは驚愕する。
まさかあの自分が彼に対してここまで――しかも無意識に――執着しているなんて。
(彼の存在が、ここまで深くなっているとは)
彼の存在が大きくなっていることは自覚していた。出合ったばかりの頃の様な危険因子としての存在ではなく、時に頼りあう事すら出来る一人の人間として。だが、それだけだと思っていたのだ。それ以上の感情など彼に対して持っていないと、思っていたのだ。
だが、実際は如何だろう。彼が他人の為にのみ生きているようだと考えた次の瞬間には、他の誰でもない自分の為に生きれば良いのにと思ったのだ。まるでそれが当然であるとでも云わんばかりに。
それに気付いてしまった以上、認め無い訳にはいかなかった。彼が――ガイが、ジェイドにとって唯一無二の特別な存在であるということを。自分の為だけに在れば良いなどという考えに至った事など、今まで生きてきて一度もありはしなかったのだから。
嗚呼、しかし。
これが『恋』だとするのなら、それは何と醜いモノであろうか。