口付けは痛いくらいが好い

 静かに理性的に実験動物を観察するように一切の情を持たない、色素とは対照的な凍えそうに冷たいその眼が好きだ。
 幾ら言っても情事中にアンタは愛の言葉をオレに囁くことを止めない。けれど、どれだけその端整な顔に微笑みを湛えようと、互いの熱に身体を上気させ恍惚としようと、紅い紅いその瞳だけは笑うどころか何の感情も浮かべていないことをオレは知っている。
 何故アンタが好き好んで上辺だけで中身の伴わないあまりにも滑稽な愛の言葉を囁きたがるのかは解らない。無意味にしか思えない行為を飽きずに毎回繰り返す意図も知れないし、知りたいとも思わないが。
 けれど、それはとても不快だ。感情が籠っていないからじゃない、意味が無いからでもない。嘘だろうが其処に愛が有るからだ。
 仮初だろうが形だけであろうが何であれ一切愛なんて要らない。オレは一度だってそんなもの必要としていないのに、それでもアンタは偽りだと分かっている愛をオレに注ぎたがる。
 そんならしくないような何処か人間臭さがするアンタは嫌いだけど、ずっと変わらずただ鋭利に冷たいその眼は好きだ。これは何も生み出さない惨めな慰め合いなんだっていうことを感じられるから。その事実を忘れないで居られるから。
 愛も優しさも哀れみも何も要らない。欲しいのは快楽、ただそれだけ。だから、

 

 オレに対するアンタの全てがその眼のように冷たく冷え切ってくれれば良いのに。